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1.
恥の多い生涯を送って来ました。 自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。 人間は、どうして一日に三度々々ごはんを食べるのだろう、 実にみな厳粛な顔をして食べている、 これも一種の儀式のようなもので、 家族が日に三度々々、時刻をきめて薄暗い一部屋に集り、 お膳を順序正しく並べ、食べたくなくても無言でごはんを噛みながら、 うつむき、家中にうごめいている霊たちに祈るためのものかも知れない 自分は、もはや何もかも、わけがわからなくなり、おもむくところは、ただアルコールだけになりました。 「不安でいけないんです。こわくて、とても、だめなんです」 「お薬を差し上げます。お酒だけは、およしなさい」 これは、造血剤。 これは、ヴィタミンの注射液。注射器は、これ。 これは、カルシウムの錠剤。胃腸をこわさないように、ジアスターゼ。 これは、何。これは、何、 これは、どうしても、なんとしてもお酒を飲みたくて、たまらなくなった時のお薬、 と言って素早く紙に包んだ小箱。 モルヒネの注射液でした。 死にたい、いっそ、死にたい、もう取返しがつかないんだ、 どんな事をしても、何をしても、駄目になるだけなんだ、恥の上塗りをするだけなんだ、 ただけがらわしい罪にあさましい罪が重なり、苦悩が増大し強烈になるだけなんだ、 死にたい、死ななければならぬ、生きているのが罪の種なのだ、 いまはもう自分は、罪人どころではなく、狂人でした。 いいえ、断じて自分は狂ってなどいなかったのです。 一瞬間といえども、狂った事は無いんです。 けれども、ああ、狂人は、たいてい自分の事をそう言うものだそうです。 自分はやっぱり狂人、いや、癈人という刻印を額に打たれる事でしょう。 人間、失格。 もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。 いまは自分には、幸福も不幸もありません。 ただ、一さいは過ぎて行きます。 ただ、一さいは過ぎて行きます。
2.
hitoni 06:02
いやなんです あなたのいつてしまふのが—— 花よりさきに実のなるやうな 種子(たね)よりさきに芽の出るやうな 夏から春のすぐ来るやうな そんな理窟に合はない不自然を どうかしないでゐて下さい 型のやうな旦那さまと まるい字をかくそのあなたと かう考へてさへなぜか私は泣かれます 小鳥のやうに臆病で 大風のやうにわがままな あなたがお嫁にゆくなんて いやなんです あなたのいつてしまふのが—— なぜさうたやすく さあ何といひませう——まあ言はば その身を売る気になれるんでせう あなたはその身を売るんです 一人の世界から 万人の世界へ そして男に負けて 無意味に負けて ああ何といふ醜悪事でせう まるでさう チシアンの画いた絵が 鶴巻町へ買物に出るのです 私は淋しい かなしい 何といふ気はないけれど ちやうどあなたの下すつた あのグロキシニヤの 大きな花の腐つてゆくのを見る様な 私を棄てて腐つてゆくのを見る様な 空を旅してゆく鳥の ゆくへをぢつとみてゐる様な 浪の砕けるあの悲しい自棄のこころ はかない 淋しい 焼けつく様な ——それでも恋とはちがひます サンタマリア ちがひます ちがひます 何がどうとはもとより知らねど いやなんです あなたのいつてしまふのが—— おまけにお嫁にゆくなんて よその男のこころのままになるなんて
3.
hojouki 02:42
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。 よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。 世の中にある人とすみかと、またかくの如し。 玉しきの都の中にむねをならべいらかをあらそへる、たかきいやしき人のすまひは、 代々を經て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。 或はこぞ破れ(やけイ)てことしは造り、あるは大家ほろびて小家となる。 住む人もこれにおなじ。所もかはらず、人も多かれど、 いにしへ見し人は、二三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。 あしたに死し、ゆふべに生るゝならひ、たゞ水の泡にぞ似たりける。 知らず、生れ死ぬる人、いづかたより來りて、いづかたへか去る。又知らず、かりのやどり、 誰が爲に心を惱まし、何によりてか目をよろこばしむる。 そのあるじとすみかと、無常をあらそひ去るさま、いはゞ朝顏の露にことならず。 或は露おちて花のこれり。 のこるといへども朝日に枯れぬ。 或は花はしぼみて、露なほ消えず。 消えずといへども、ゆふべを待つことなし。

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POEM CORE TOKYO第13弾リリースは、加藤学と中村修人による音楽ユニットusual nameと朗読家、唐ひづるによるコラボレーション作品だ。
生楽器を大胆に取り入れたトラックに太宰治、 高村光太郎といった文豪の作品を圧倒的なスキルで朗読するスタイルは確かな説得力を持っています。特に2曲目は圧巻です!!

・唐ひづる
円演劇研究所出身。
新劇・アングラ・小劇場でヒロインからイロモノまで演じてきたが、
現在は芝居を辞め、朗読家に転身。
舞台朗読やライブハウスなどで朗読ライブやミュージシャンとのコラボ、
即興音楽的現代朗読パフォーマンス等の活動を行っている。
青森県の昔話や、太宰治、宮沢賢治作品などを東北弁で朗読し好評を得ている。
「ありのままの自分」で自由な表現を追求中。
2008年国際芸術連盟朗読芸術賞受賞
ボイスセラピスト2級
現代朗読協会及び国際芸術連盟会員
www.facebook.com/hizuru.kara

・usual name
加藤学と中村修人による音楽ユニット。
外部の作曲家や演奏家と積極的にコラボレーションを行い、
音楽性を限定させず、様々なジャンルの楽曲を制作する。
自身の作品制作以外にもBGM提供が盛んであり、
多くの映像作品や展示会などに携わっている。
usualname.com

credits

released March 9, 2014

1.ningen shikkaku…Written by 太宰治 / Composed by 中村修人
2.hitoni…Written by 高村光太郎 / Composed by 唐ひづる and usual name
3.hojouki…Written by 鴨長明 / Composed by 唐ひづる and usual name

唐ひづる…reading
加藤学…bass,noise,,illustration
中村修人…drum,piano,design

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POEM CORE TOKYO Tokyo, Japan

POEM CORE TOKYO is a netlabel out of tokyo that focuses on poem core.

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