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ningen shikkaku

from shisyuu by 唐ひづる and usual name

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lyrics

恥の多い生涯を送って来ました。

自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。
人間は、どうして一日に三度々々ごはんを食べるのだろう、
実にみな厳粛な顔をして食べている、
これも一種の儀式のようなもので、
家族が日に三度々々、時刻をきめて薄暗い一部屋に集り、
お膳を順序正しく並べ、食べたくなくても無言でごはんを噛みながら、
うつむき、家中にうごめいている霊たちに祈るためのものかも知れない

自分は、もはや何もかも、わけがわからなくなり、おもむくところは、ただアルコールだけになりました。
「不安でいけないんです。こわくて、とても、だめなんです」
「お薬を差し上げます。お酒だけは、およしなさい」
これは、造血剤。 これは、ヴィタミンの注射液。注射器は、これ。
これは、カルシウムの錠剤。胃腸をこわさないように、ジアスターゼ。
これは、何。これは、何、
これは、どうしても、なんとしてもお酒を飲みたくて、たまらなくなった時のお薬、
と言って素早く紙に包んだ小箱。
モルヒネの注射液でした。

死にたい、いっそ、死にたい、もう取返しがつかないんだ、
どんな事をしても、何をしても、駄目になるだけなんだ、恥の上塗りをするだけなんだ、
ただけがらわしい罪にあさましい罪が重なり、苦悩が増大し強烈になるだけなんだ、
死にたい、死ななければならぬ、生きているのが罪の種なのだ、

いまはもう自分は、罪人どころではなく、狂人でした。
いいえ、断じて自分は狂ってなどいなかったのです。
一瞬間といえども、狂った事は無いんです。
けれども、ああ、狂人は、たいてい自分の事をそう言うものだそうです。
自分はやっぱり狂人、いや、癈人という刻印を額に打たれる事でしょう。

人間、失格。

もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。
いまは自分には、幸福も不幸もありません。
ただ、一さいは過ぎて行きます。
ただ、一さいは過ぎて行きます。

credits

from shisyuu, released March 9, 2014
Written by 太宰治 / Composed by 中村修人

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